保存された放課後
卒業式の放課後
理科準備室に「保存瓶」が並んでいた。
「これ、この3年間の『一番幸せな瞬間』を詰めたものだよ」
風変わりな先生が笑う。
瓶の中には、夕焼けの光や
笑い声の波形が揺れていた。
僕は自分の瓶を探した。
でも、中身は空っぽだった。
「僕には、保存するほどの思い出なんて……」
落ち込む僕の肩を
ずっと片思いしていた隣の席の彼が叩いた。
「僕の瓶、見てよ」
彼が差し出した瓶の中には
僕が教科書の隅に描いた落書きが
黄金色に輝いて浮いていた。
「君の日常が、僕の宝物だったんだ」
空っぽだった僕の瓶が
その瞬間、彼と同じ光で満たされた。
(完)


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