-栞の痕跡-
古本屋で見つけた、懐かしい表紙。
十年前、彼に貸したまま返ってこなかった恋愛小説だ。
パラパラと捲ると、百二十ページ目に押し花の栞が挟まっていた。
「これ、私が挟んだやつじゃない!」
そこには、彼の几帳面な字で書き置きがあった。
『勇気がなくて言えなかった。君のことが好きだ』
胸が締め付けられる。
私たちは親友のまま、彼は遠い街の誰かと結婚した。
ふと見ると、栞の裏に日付があった。
それは、彼が結婚報告をしてきた前日の日付。
再会した本は、もう一度だけ私を泣かせてから、
静かに元の棚へと帰っていった。
(完)


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