届かなかった既読

-届かなかった既読-

「今から帰るよ。サプライズがあるんだ」

彼からのLINEが届いたのは、三年前の今日だった。

私は浮き足立って料理を並べ、彼の帰りを待った。
けれど、彼は帰ってこなかった。

凍結した路面で車がスリップしたというニュースを
私は冷めたグラタンを前にして見ていた。

それから毎日
私は彼のスマホにメッセージを送り続けている。

「おはよう」
「今日は雨だね」
「会いたいよ」

返信が来るはずはない。

解約していない彼のスマホは
仏壇の横でずっと充電されているのだから。

しかし、三回忌の夜。

私のスマホに一通の通知が届いた。
『既読』 心臓が止まるかと思った。

震える手で画面を開く。

そこには、三年前のあの日に彼が送ろうとしていた、
下書きの続きが届いていた。


「結婚しよう。一生君を離さないから」


画面が涙で歪む。

タイムラグを経て届いたプロポーズは
もう二度と触れられない彼からの
最後で最高の残酷な贈り物だった。

(完)

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