-ラスト・テイク-
僕たちは、大学の映画サークルで出会った。
「最高の恋愛映画を撮ろう」
それが、監督の僕と、主演の彼女の合言葉だった。
撮影は順調に進み、残すはラストシーンの告白だけ。
けれど、クランクアップを前にして、彼女の病気が発覚した。
「最後まで撮って。それが私のわがままだから」
病室に機材を持ち込み、カメラを回す。
痩せてしまった彼女は、それでも画面の中で誰よりも美しく笑った。
「私、あなたのことが大好きだったよ。……カット、でいい?」
彼女の瞳から一筋の涙がこぼれる。
それは台本にはない、本物の言葉だった。
「カット。……OKだ」
僕の声が震える。
数日後、彼女は逝った。
僕の手元には、世界で一番美しい「愛の告白」が残された。
けれど僕は、その映画を一生完成させることができない。
ラストシーンの後に続く、彼女のいない「日常」を撮る勇気がないから。
(完)


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