-3度目のプロポーズ-
「結婚しよう」
彼が差し出した指輪は、これで三つ目だ。
一度目は海辺で。
二度目は夜景の見えるレストランで。
そして三度目の今日は、自宅のキッチン。
「……嬉しい。でも、前の二つはどうしたの?」
私が尋ねると、彼は困ったように笑った。
「君が失くしちゃったんだよ。
相当ショックだったみたいで、記憶から消えてるんだね」
確かに、私の指には何も残っていない。
彼が嘘をつく理由もない。
私は幸せを噛み締めながら、彼が作ってくれたスープを飲み干した。
急に強い眠気が襲ってくる。
薄れゆく意識の中で、彼が私の指から、
まだ馴染んでいない三つ目の指輪を抜き取るのが見えた。
「これで三つ目だ。質屋に入れれば、次の『出会い』の資金になる」
彼はリビングの床下を開けた。
そこには、薬で眠らされた「歴代の婚約者」たちの写真が、
コレクションのように並んでいた。
(完)


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