-守護霊の告白-
「大丈夫、僕がずっと守ってあげるからね」
鏡の中の自分に向かって、私は毎日そう語りかける。
ストーカー被害に遭ってから、私の精神は限界だった。
深夜の無言電話、ポストに投げ込まれる執拗な手紙。
でも、彼――鏡の中に映る「もう一人の私」が
励ましてくれるおかげで、今日まで耐えてこれた。
ある夜、ついに玄関の鍵がこじ開けられた。
「逃げて!」
鏡の中の彼が叫ぶ。
私は必死にベランダへ走り、手すりを乗り越えた。
「……ありがとう。君のおかげで、あいつに捕まらずに済むよ」
地上へ落下する刹那、私は鏡越しではない、本物の「彼」と目が合った。
彼は部屋の入り口で、警察の手帳を手に立ち尽くしていた。
「……間に合わなかったか」
刑事が絶望したように呟く。
私が「守護霊」だと思い込み
毎日鏡越しに愛を囁いていた存在は
ただの「向かいのマンションから私を監視し続けていたストーカー」の反射だったのだ。
(完)


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