-感情翻訳機-
近未来、誰でも本音がわかる「感情翻訳機」が発売された。
恋人と喧嘩をした夜、私はそのイヤホンを耳に突っ込んだ。
「もう顔も見たくない! 出て行って!」
私の叫びを、翻訳機は淡々と耳元で変換する。
『本当は引き止めてほしい。一人になるのが怖い』
彼がドアノブに手をかけ、ボソッと呟いた。
「……わかったよ。勝手にしろ」
翻訳機がささやく。
『ごめん。君を怒らせたくないんだ。でも、どう謝ればいいか分からない』
私は彼の背中に抱きついた。翻訳機は静かにシャットダウンした。
言葉の裏側にある本当の体温を知るために、もう機械の助けはいらない。
(完)


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