幸せの場所

-記憶の現像液-

亡くなった祖父の遺品整理で見つけた、古びたカメラ。
シャッターを切ると、被写体の「一番幸せだった記憶」が
写真として現像される不思議な道具だった。

試しに飼い犬を撮ると、私と一緒にボール遊びをしている写真が出てきた。
庭の花を撮ると、若き日の祖母が如雨露(じょうろ)を持って笑っている写真が出た。
最後に、私は鏡に向かって自分自身を撮ってみた。

出てきたのは、真っ暗な部屋でこのカメラを構える、今の私の姿だった。

「……あぁ、そうか」

幸せは過去にあるんじゃない。
大切な誰かの幸せを記録しようとしている、
この一瞬こそが私の幸せだったんだ。

(完)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次