-3分前の消しゴム-
その消しゴムで書いた文字を消すと、現実の「三分間」が白紙に戻る。
私は大事な商談で大失敗した瞬間、それを使った。
……気がつくと、会議室に入る直前の廊下に立っていた。
「よし、今度は完璧だ」
私はスラスラとプレゼンをこなし、拍手喝采を浴びた。
けれど、ふと気づく。
隣で笑っている同僚の冗談も、窓の外を横切った鳥の羽ばたきも、
全部一度見た「既視感」でしかない。
しばらくして私は消しゴムをゴミ箱に捨てた。
失敗して、恥をかいて、予期せぬ言葉に傷つく。
真っ白に消せない「今」という汚れがあるからこそ
明日の景色は新しく見えることに気づいたから。
(完)


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