窓越しの定位置
ある冬の夕暮れ
私はいつものカフェの窓際席に座っていた。
「遅いなぁ」
約束の時間を一時間過ぎても
彼は現れない。
ふと窓の外を見ると
彼は道の反対側で花束を抱え
こちらをじっと見つめていた。
目が合った。
でも、彼は駆け寄ってこない。
ただ、悲しそうに微笑んで花束を地面に置いた。
そこには、色褪せた私の写真と
一年前のあの日と同じ
ひしゃげたガードレールがあった。
「ごめんね、もう行かなきゃ」
彼の唇がそう動いた瞬間
私の座っていた椅子の冷たさが
ようやく心に伝わってきた。
(完)


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