結露のメッセージ

結露のメッセージ

 「パパ、おかえり!」

娘が玄関まで駆けてくる。
でも、その小さな手は私の体をすり抜けた。

あの日以来、家族は私の不在に慣れようと必死だ。
妻は食卓に私の分の箸を並べなくなった。

寂しくて、私は窓ガラスに
指で「愛してる」と書いた。

結露したガラスに浮かぶ文字を見て
妻が息を呑む。

「パパがいるの?」

娘がはしゃぐ。

妻は泣きながら
私の文字の横に自分の手を重ねた。

「パパ、お仕事が終わったのね。お疲れ様」

その温もりが
透き通った私の指先を
優しく溶かしていった。

(完)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次