-記憶のカレーライス-
彼が亡くなって、一年が経った。
彼は料理が下手だったけれど、年に一度、私の誕生日だけはカレーを作ってくれた。
ジャガイモが大きすぎて、少し焦げた、不格好なカレー。
私は一人で、彼の残したレシピノートを開く。
そこには『玉ねぎは飴色になるまで。疲れてる時は早めに切り上げてよし』と、
私の体調を気遣うメモが添えられていた。
「……バカね、自分の誕生日に作らせてたのに」
一口食べると、あの頃と同じ、少しだけしょっぱい味がした。
それはスパイスのせいじゃなく、私の涙のせいだと分かっている。
彼が残してくれたのは、レシピじゃない。
「美味しいね」と笑い合った、何気ない火曜日の記憶そのものだった。
(完)


コメント