-感情のクリーニング店-
街の片隅に、汚れではなく「感情」を洗うクリーニング店がある。
「すみません、この『悲しみ』を落としてください」
失恋したばかりの女性が、泥のように重く湿った心を持ち込んだ。
店主の老人は、それを丁寧に預かり、一晩かけて銀河の水で洗い流した。
翌朝、返された心は驚くほど軽く、ふんわりと温かかった。
「お代は?」
「いいえ、お代の代わりに、あなたの『一番小さな喜び』を一つ、ここに置いていってください」
女性が思い出したのは、今朝道端で見つけた四つ葉のクローバーのこと。
その小さな輝きを店主に渡すと、老人はそれを棚にある「絶望した誰か」の心の裏地に、そっと縫い付けた。
優しさは、こうして見知らぬ誰かの裏地で、静かに光り続けている。
(完)


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