-浮気の地層-
彼が嘘をつくたび、足元の地面が数センチずつ盛り上がっていく。
「仕事で遅くなっただけだよ」
その言葉が終わる頃には、彼はリビングの天井に頭をぶつけていた。
「ねえ、もう五メートルは積もってるわよ。その地層、何?」
私はスコップを持って、彼の足元の地層を掘り返してみた。
三メートル付近からは『知らない女性の香水』の化石が出てきて、
四メートル付近からは『レストランの領収書』の琥珀が見つかった。
「これは……ただの地殻変動だよ」
彼がさらに嘘を重ねると、ついに家を突き破って、彼はエベレスト級の山頂へと押し上げられた。
私は地上に取り残され、空高くそびえ立つ「嘘の山」を見上げた。
雲の上から「ごめん、高所恐怖症なんだ!」という叫び声が聞こえたが
私は黙って登山靴の紐を締め直した。
(完)


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