-電話ボックス-
もう誰も使わなくなった、公園の隅の古い電話ボックス。
そこから特定の番号にかけると
一分間だけ「会いたい人」と話せるという噂があった。
僕は震える指で、今はもう繋がらないはずの彼女の番号を押した。
『……もしもし、遅いよ』
受話器から聞こえたのは、懐かしいあの声だった。
「ごめん、ずっと謝りたかったんだ」
『いいよ。私、幸せだったから。ねえ、もうすぐ一分。最後に一つだけ。』
「何?」
『後ろ、向かないで。今、あなたの背中に触れてるから。』
温かい感触がした気がして振り返ったが、そこには夜の風に揺れる銀杏の葉があるだけだった。
(完)


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