-言葉を届けるポスト-
そのポストに手紙を入れると、宛先がなくても、
世界で一番その言葉を必要としている人の元へ届くという。
ただし、書けるのは「誰にも言えなかった、優しい嘘」だけだ。
ある日、一人の少年が震える手でハガキを投函した。
『僕はもう大丈夫だよ。天国でも笑っていてね』
その言葉は、時空を超えて、病床で息を引き取ろうとしていた見知らぬ老紳士の枕元に届いた。
老紳士は、そのハガキを握りしめ、穏やかな微笑みを浮かべて旅立った。
「……ああ、あの子は大丈夫なんだな」
届いたのは、少年が亡き母へ宛てた嘘だったけれど、
それは孤独な老人の最期を救う「真実の救い」になった。
ポストは今日も、誰かの優しい嘘を食べて、世界のどこかで誰かの涙を拭っている。
(完)


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