-割り勘の境界-
「僕たち、価値観が合わないみたいだ。別れよう」
三年の交際にピリオドを打つ瞬間、彼はカッターナイフを取り出した。
「思い出も、全部きれいに半分にしよう」
彼はまず、二人で撮った写真を物理的に真っ二つに切り、
次に共有していたNetflixのアカウント画面をモニターごと叩き割った。
「これは僕の分。これは君の分」
驚く私を余所に、彼はさらにエスカレートしていく。
「……最後は、これだ」
彼が自分の体を縦にスライスしようとした時、私は止めた。
「待って、その左半分は私の誕生日にプレゼントしたネクタイを締めてるわ。返して」
私たちは結局、思い出の所有権を巡って家庭裁判所で戦うことになった。
愛の終わりは、いつだって事務的な断裁作業である。
(完)


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