-三度目のさよなら-
私たちは、さよならを言うのが下手だった。
一度目は、卒業式の校門。
二度目は、彼が遠くの街へ行く空港のゲート。
そして三度目は、偶然再会した交差点。
「元気そうでよかった」
「あなたもね」
短い会話の後、お互いに背を向けて歩き出す。
けれど、十歩進んだところで、二人の足が同時に止まった。
どちらからともなく振り返り、駆け寄る。
「もう、さよならは言わない」
彼が私の肩に顔を埋めて囁く。
「次は、一生解けない魔法の言葉にして」
交差点の信号が青に変わっても、二人の世界だけが静かに時を止めていた。
(完)


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