-左手のリマインダー-
彼はいつも、私の左手の薬指を「予約済み」と言って甘噛みする癖があった。
結局、喧嘩別れをして三ヶ月。
私は新しい街で、彼を忘れるために必死に働いていた。
仕事帰りの夜道、後ろから「すみません」と声がした。
振り返ると、少し息を切らした彼がいた。
「……何、ストーカー?」
強がってみせる私に、彼は震える手で小さな箱を差し出した。
「リマインダーだよ。君が忘れても、僕が忘れてないから」
箱の中には、シンプルな指輪。
「予約期間は終了。これからは、一生の貸切にしてほしい」
私の左手は、三ヶ月前よりもずっと熱くなった。
(完)


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