-屋上からの景色-
「ねえ、一緒に飛ぼう?」
彼女は僕の手を握り、屋上のフェンス越しに微笑んだ。
学校でのいじめ、親との不和。
絶望の中にいた僕を救ってくれたのは、同じ悩みを持つ彼女だった。
「怖くないよ。二人なら、きっとどこまでも行ける」
僕たちは合図に合わせて、地上へ向かって身を投げた。
重力から解放される。視界が急速に流れていく。
だが、僕の手を握っていた彼女の感触が、ふっと消えた。
「……え?」
上を見上げると、彼女はフェンスを掴んだまま、冷ややかな目で見下ろしていた。
「一人じゃ飛び降りる勇気がないって言ってたから、背中を押してあげただけだよ」
彼女が「死にたい」と言っていたのは、僕の警戒を解くための嘘。
彼女は、人が地面に叩きつけられる瞬間の「音」をコレクションしている殺人鬼だった。
(完)


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