-粋な店主-
個人経営の小さな文房具店。
小学生の男の子が、握りしめた小銭をカウンターに置いた。
「これ、お母さんの誕生日にあげたいんです」
彼が選んだのは、三千円もする高級な万年筆だった。
手元の小銭はどう見ても数百円。
店主の老人は、困った顔をする代わりに、真剣な顔で電卓を叩いた。
「……おや、ちょうど今日から『大決算セール』だったな。
おまけに君は『百人目のお客様』だ。
合わせて、えーと、ちょうどその小銭の分だね」
「本当!? ありがとう、おじいちゃん!」
男の子が飛び跳ねながら帰った後
店主はレジから自分の財布を取り出し
足りない分をそっと補充した。
「……安すぎる買い物は、男のプライドを傷つけるからな」
老人は、少しだけ誇らしげに鼻をこすった。
(完)


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