-パラレルワールドの珈琲-
「いらっしゃいませ。当店は、並行世界のコーヒーを提供するカフェです」
マスターが恭しく、琥珀色の液体をカップに注ぐ。
私は半信半疑で、そのコーヒーを口にした。
「……あれ?」
景色が一瞬、歪んだ。
私は、今の会社ではなく
昔諦めた「小説家」になっている世界の自分と意識がリンクしていた。
そこでは、売れないながらも、楽しそうに執筆活動をする私がいた。
「どうですか? 『もしも』の世界の味は」
マスターが微笑む。
私は元の世界に戻り、コーヒーを飲み干した。
「……悪くなかった。でも、こっちの世界の私が書く小説の方が、きっと面白い」
私は並行世界の自分に負けじと、鞄からノートを取り出した。
(完)


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