-心の声-
彼は、彼女が何を考えているか知りたくて
「心の声が聞こえる耳栓」を闇市で買った。
それを装着して彼女に向き合うと
彼女の口からは「好きよ」という言葉が出ているのに
耳栓からは全く別の音が聞こえてきた。
『シュゴォォー。本日ノ、大気圧ハ、安定セリ。愛、充填率、八十パーセント』
「……機械音?」
驚く彼に、彼女は無表情に首を傾げた。
「どうしたの? 私はただ、あなたという個体との生体反応を楽しんでいるだけよ」
彼女が彼の耳栓をひょいと奪って自分の耳に入れると
彼の心からは『ピポパポ』という電子音が漏れていた。
二人は無言で手を繋ぎ、回路を繋ぐように指を絡ませた。
(完)


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