記憶のしおり

-記憶のしおり-

「もし私があなたのことを忘れても、怒らないでね」

病室で彼女は弱々しく笑った。
僕は何も言えず、彼女が読んでいた本の途中に、青いリボンのしおりを挟んだ。

数年後、古本屋で偶然その本を見つけた。
手に取ると、中からあの時の青いしおりが落ちる。
そこには、彼女の筆跡で小さな書き置きがあった。

『ここまで読んでくれてありがとう。続きは、天国で一緒に読みましょう。』

しおりの裏には、僕が教えた覚えのない「愛してる」の文字が、滲んだ跡とともに残っていた。

(完)

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