3つ目の軍手

-3つ目の軍手-

冬の朝、庭の手入れをする夫が「片方の軍手がない」と騒ぎ出した。

「もう、そこにあるじゃない」

妻が指差したのは、庭の木にちょこんと掛けられた、真っ赤な子供用の毛糸の手袋だった。
それは二十年以上前、息子が失くしたはずのもの。

「どうして今さら……」

驚く二人の前に、ひょっこりと一匹のリスが現れた。
リスは手袋の中から小さな木の実を取り出し、満足げに食べている。

「僕たちの忘れ物が、誰かの食堂になっていたんだな」

夫が笑うと、妻もつられて笑った。

「私たちの愛も、あんなふうに誰かを温めていたらいいわね」

空は青く、冷たい風の中でも、二人の周りだけは春のような陽だまりに包まれていた。

(完)

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