-秘密のレシピ-
「お母さんの肉じゃが、どうしても再現できないんだ」
新婚の妻が項垂れる。
彼は笑って「いいよ、十分美味しいから」
と慰めるが、確かに何かが違った。
母が亡くなる前、最後に遺したメモには『隠し味:少しの冒険』とだけ。
ある日、妻が「これかも!」と出してきた一皿。
一口食べた瞬間、彼は目を見開いた。
実家の、あの味だ。
「どうやったの?」
「実家のお父さんに聞いたの。お母さん、実は市販のタレに、お父さんが内緒で買ってくる高いワインを勝手に入れてたんだって」
二人の笑い声が、懐かしい香りに溶けていった。
(完)


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