ショートストーリー– category –
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パラレルワールドの珈琲
-パラレルワールドの珈琲-「いらっしゃいませ。当店は、並行世界のコーヒーを提供するカフェです」 マスターが恭しく、琥珀色の液体をカップに注ぐ。 私は半信半疑で、そのコーヒーを口にした。 「……あれ?」 景色が一瞬、歪んだ。 私は、今の会社ではなく... -
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星屑のラジオ
-星屑のラジオ-宇宙貨物船の操縦士である僕は、広大な虚空に飽き飽きしていた。 楽しみは、骨董品屋で買った「超空間ラジオ」を弄ることだ。 このラジオは時折、数光年、あるいは数世紀離れた場所からの、ノイズ混じりの放送を受信する。 ある日、ラジオか... -
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百年目のアップデート
-百年目のアップデート-「おじいちゃん、またその古い型のアンドロイドを直してるの?」 孫娘が呆れたように、僕の手元を見る。 僕が修理しているのは、百年前に製造された家事手伝いロボットの「アイ」だ。 「これはな、おばあちゃんが最後に使っていた、... -
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3分前の消しゴム
-3分前の消しゴム-その消しゴムで書いた文字を消すと、現実の「三分間」が白紙に戻る。 私は大事な商談で大失敗した瞬間、それを使った。 ……気がつくと、会議室に入る直前の廊下に立っていた。 「よし、今度は完璧だ」 私はスラスラとプレゼンをこなし、... -
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幸せの場所
-記憶の現像液-亡くなった祖父の遺品整理で見つけた、古びたカメラ。シャッターを切ると、被写体の「一番幸せだった記憶」が写真として現像される不思議な道具だった。 試しに飼い犬を撮ると、私と一緒にボール遊びをしている写真が出てきた。庭の花を撮る... -
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感情翻訳機
-感情翻訳機-近未来、誰でも本音がわかる「感情翻訳機」が発売された。恋人と喧嘩をした夜、私はそのイヤホンを耳に突っ込んだ。「もう顔も見たくない! 出て行って!」私の叫びを、翻訳機は淡々と耳元で変換する。『本当は引き止めてほしい。一人になるの... -
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窓越しの挨拶
-窓越しの挨拶-入院生活が三ヶ月を過ぎた頃私の楽しみは「窓の外のクレーン」を眺めることだった。 向かいのビル建設現場。豆粒のように見える作業員たちがせっせと働いている。 ある日、私はふと思い立ってスケッチブックに大きく『お疲れ様です』と書い... -
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粋な店主
-粋な店主-個人経営の小さな文房具店。 小学生の男の子が、握りしめた小銭をカウンターに置いた。 「これ、お母さんの誕生日にあげたいんです」 彼が選んだのは、三千円もする高級な万年筆だった。手元の小銭はどう見ても数百円。 店主の老人は、困った顔... -
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守護霊の告白
-守護霊の告白-「大丈夫、僕がずっと守ってあげるからね」 鏡の中の自分に向かって、私は毎日そう語りかける。 ストーカー被害に遭ってから、私の精神は限界だった。深夜の無言電話、ポストに投げ込まれる執拗な手紙。でも、彼――鏡の中に映る「もう一人の... -
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最後の授業
-SS-チャイムが鳴り、静まり返った教室に足を踏み入れる。 窓際の席に座る彼女は、今日も教科書を広げたまま、ぼんやりと外を眺めていた。 「……そこ、難しいか?」 私が声をかけると、彼女はハッとして顔を上げた。 「先生、また教えに来てくれたの?」 「... -
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散歩道の再会
-散歩道の再会-公園のベンチで、私は「彼」が来るのを待っていた。 出会ったのは半年前。一目惚れだった。輝くような金色の髪、潤んだ瞳。言葉を交わさずとも、見つめ合うだけで心が通じ合うのを感じた。 「お待たせ」 現れた彼は、今日も眩しいほどに美し... -
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嘘つきな隣人
-嘘つきな隣人-「隣の部屋の男には気をつけろ。あいつは前科者だ」 そんな噂を耳にしながらも、私は隣人の佐藤さんに惹かれていた。 彼は口数が少なく、いつも重そうな黒いバッグを抱えて夜中に帰ってくる。 ある日、彼の部屋から「ガシャン!」と何かが割... -
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秘密の共犯者
-秘密の共犯者-私は、愛する彼を「騙す」ことに決めた。 数ヶ月前から緻密な計画を練り、協力者を集め、彼のアリバイを完璧に崩すための工作を続けてきた。 ターゲットは、彼の誕生日の夜。 「仕事で遅くなる」と嘘をつき、私は暗い部屋で彼が帰宅するのを... -
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消えた結婚指輪
-消えた結婚指輪-結婚式を間近に控えたある朝、私の婚約指輪が姿を消した。 寝る前に外して置いたはずのドレッサーの上は空っぽ。泥棒の形跡もなく、同居している彼を疑いたくはなかったけれど、最近の彼はこそこそと夜中に外出を繰り返していた。 「……ね... -
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3度目のプロポーズ
-3度目のプロポーズ-「結婚しよう」 彼が差し出した指輪は、これで三つ目だ。一度目は海辺で。二度目は夜景の見えるレストランで。そして三度目の今日は、自宅のキッチン。 「……嬉しい。でも、前の二つはどうしたの?」 私が尋ねると、彼は困ったように笑... -
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運命の赤い糸
-運命の赤い糸-「私たち、絶対に運命だと思うの」 彼女はそう言って、僕の小指に赤い刺繍糸を巻き付けた。 出会いは半年前。僕が落とした財布を彼女が拾ってくれたのがきっかけだ。趣味も、好きな映画も、誕生日の数字まで同じ。これほど気が合う女性には... -
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AIの逆襲
-AIの逆襲-「もう嫌だ! 宿題なんて、全部AIにやらせてやる!」 僕は泣きべそをかきながら最新型の学習支援AIに、算数のドリルを丸投げした。 「いいよ。その代わり、君は僕の代わりに『休憩』をしていて」 数時間後、AIは完璧に宿題を終わらせていた。 「... -
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勇者の遺言
-勇者の遺言-「魔王よ、これで終わりだ……!」 勇者は最後の一撃を放ち、魔王と共に崩れ落ちた。 駆け寄る仲間たち。涙に暮れる僧侶。 「勇者様! 死なないでください!」 勇者は血を吐きながら、震える手で懐から一通の手紙を取り出した。 「これ、……王様... -
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3度目の正直
-3度目の正直-中学で片思い。高校で告白して玉砕。 そんな苦い歴史を持つ彼と、二十五歳の同窓会で再会した。 「相変わらず、すぐ顔に出るな」 隣に座った彼は、私の真っ赤な頬を見ておかしそうに笑う。 「もう大人なんだから、からかわないでよ」 「から... -
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ラスト・テイク
-ラスト・テイク-僕たちは、大学の映画サークルで出会った。 「最高の恋愛映画を撮ろう」 それが、監督の僕と、主演の彼女の合言葉だった。 撮影は順調に進み、残すはラストシーンの告白だけ。 けれど、クランクアップを前にして、彼女の病気が発覚した。 ... -
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届かなかった既読
-届かなかった既読- 「今から帰るよ。サプライズがあるんだ」 彼からのLINEが届いたのは、三年前の今日だった。私は浮き足立って料理を並べ、彼の帰りを待った。けれど、彼は帰ってこなかった。 凍結した路面で車がスリップしたというニュースを私は冷めた... -
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雪の上の足跡
-- 雪が降り積もる夜、私はついにあいつを突き落とした。別荘のバルコニーから崖下へ。 翌朝には雪がすべてを覆い隠し、事故死として処理されるはずだ。 私は自分の足跡がつかないよう、スノーシューを履いて慎重に裏口から戻った。 「よし、これで自由だ... -
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完璧な断捨離
-完璧な断捨離- 「ミニマリスト」を気取るのは、証拠を消すのに好都合だった。 邪魔になった共同経営者を山中に埋めた後、私は彼の遺品を徹底的に処分した。彼の服、靴、書類、そして愛用していた高価な腕時計。 すべてを中古ショップやゴミ処理場へ分散し... -
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ラストパスワード
-ラストパスワード- 「これで最後ね」 別れの日、彼女はノートパソコンを初期化した。 同棲していた三年分の写真も、思い出の曲も、すべて消去。 「パスワード、変えといてよ。あなたの誕生日じゃ、簡単すぎるから」 彼女はそう言って、鍵を置いて出て行っ...
