ショートストーリー– category –
-
ショートストーリー
雪の上の足跡
-- 雪が降り積もる夜、私はついにあいつを突き落とした。別荘のバルコニーから崖下へ。 翌朝には雪がすべてを覆い隠し、事故死として処理されるはずだ。 私は自分の足跡がつかないよう、スノーシューを履いて慎重に裏口から戻った。 「よし、これで自由だ... -
ショートストーリー
完璧な断捨離
-完璧な断捨離- 「ミニマリスト」を気取るのは、証拠を消すのに好都合だった。 邪魔になった共同経営者を山中に埋めた後、私は彼の遺品を徹底的に処分した。彼の服、靴、書類、そして愛用していた高価な腕時計。 すべてを中古ショップやゴミ処理場へ分散し... -
ショートストーリー
ラストパスワード
-ラストパスワード- 「これで最後ね」 別れの日、彼女はノートパソコンを初期化した。 同棲していた三年分の写真も、思い出の曲も、すべて消去。 「パスワード、変えといてよ。あなたの誕生日じゃ、簡単すぎるから」 彼女はそう言って、鍵を置いて出て行っ... -
ショートストーリー
栞の痕跡
-栞の痕跡- 古本屋で見つけた、懐かしい表紙。 十年前、彼に貸したまま返ってこなかった恋愛小説だ。パラパラと捲ると、百二十ページ目に押し花の栞が挟まっていた。 「これ、私が挟んだやつじゃない!」 そこには、彼の几帳面な字で書き置きがあった。 『... -
ショートストーリー
鏡の中の共犯者
-鏡の中の共犯者- アリバイ工作に、最新の「AIホログラム」を使った。 あらかじめ撮影しておいた自分の映像を自室に投影しオンライン会議に参加させる。 その隙に私は裏口から抜け出し、憎い上司を始末した。 戻ってきた私は会議を終えたホログラムの自分... -
ショートストーリー
最後の目撃者
-最後の目撃者- 「犯人の顔を見たんですか?」 刑事の問いに、老人は静かに頷いた。 「ええ。雨の夜でした。 街灯の下で、男が女性の首を絞めているのを、この窓からハッキリと」 現場は老人のアパートの真向かい。遮るものは何もない。 「男の特徴は?」... -
ショートストーリー
完璧な身代わり
-完璧な身代わり- 「双子で良かったよ。君がいれば、僕のアリバイは完璧だ」 兄は返り血を拭いながら鏡合わせのような僕に笑いかけた。 一時間前、彼は借金取りを刺した。その間、僕は彼になりすまして、賑やかなパーティ会場で大勢と乾杯していたのだ 「... -
ショートストーリー
昨日の忘れ物
昨日の忘れ物 図書室の窓際。いつも同じ席に座る先輩は時々「未来」を忘れていく。 昨日は、来週発売されるはずの雑誌。今日は、明日降るはずの雨で濡れた傘。 「先輩、これ」 傘を差し出すと先輩は不思議そうに目を細めた。 「君、それが見えるんだ。僕と... -
ショートストーリー
保存された放課後
保存された放課後 卒業式の放課後理科準備室に「保存瓶」が並んでいた。 「これ、この3年間の『一番幸せな瞬間』を詰めたものだよ」 風変わりな先生が笑う。瓶の中には、夕焼けの光や笑い声の波形が揺れていた。 僕は自分の瓶を探した。でも、中身は空っぽ... -
ショートストーリー
感情翻訳機
感情翻訳機 文化祭の出し物で作った「感情翻訳機」は、ただのガラクタのはずだった。 段ボールのヘルメットを被ると、相手の心の声がスピーカーから流れる仕組み。 「好きだよ」 意中の彼女に被せると、機械が機械音でそう告げた。 「えっ」と驚く僕に彼女... -
ショートストーリー
告白のイヤホン
告白のイヤホン 放課後の図書室。憧れの先輩に、片方のイヤホンを渡された。 「これ、私が作った曲。聴いてみて」 ワイヤレスイヤホンから流れてきたのは、メロディではなく、女の声だった。 『好き。大好き。ずっと見てるよ。 右の靴箱、三番目。昨日は1... -
ショートストーリー
影踏み
影踏み 放課後の屋上。あいつと影踏みをして遊んでいた。 「捕まえた!」 僕があいつの影の頭を思い切り踏むと、あいつは「うわっ」と声を上げて倒れ込んだ。 「大げさだな」と笑ったが、あいつはピクリとも動かない。 よく見ると、あいつの頭から血が流れ... -
ショートストーリー
タイムカプセルの嘘
タイムカプセルの嘘 卒業式。僕たちは校庭の隅に「10年後の自分へ」の手紙を埋めた。 「10年後、もしお互い独りだったら結婚しよう」 そんなベタな約束を交わして、僕たちは別々の大学へ進み、自然に連絡も途絶えた。 10年後の今日。掘り起こされたカプセ... -
ショートストーリー
殺人的な給水
殺人的な給水 「喉が渇いた……」 路地裏に倒れ込んだ僕に、現代人が差し出したのは一本の透明な棒。 「水だよ」 受け取って絶句した。重い。それに、外殻が『プラスチック』という古代の環境破壊物質でできている。 恐る恐る口をつけると、液体がドボドボと... -
ショートストーリー
永遠の留守番
永遠の留守番 「ただいま。……って、誰もいないか」 鍵を開けて入ってきた彼は少し痩せていた。 私は嬉しくて彼の足元に駆け寄り喉を鳴らして甘えた。でも、彼は気づかずにカバンを置く 彼はふと、部屋の隅にある空のボウルを見て呟いた。「お前が死んでか... -
ショートストーリー
結露のメッセージ
結露のメッセージ 「パパ、おかえり!」 娘が玄関まで駆けてくる。でも、その小さな手は私の体をすり抜けた。 あの日以来、家族は私の不在に慣れようと必死だ。妻は食卓に私の分の箸を並べなくなった。 寂しくて、私は窓ガラスに指で「愛してる」と書い... -
ショートストーリー
窓越しの定位置
窓越しの定位置 ある冬の夕暮れ私はいつものカフェの窓際席に座っていた。 「遅いなぁ」 約束の時間を一時間過ぎても彼は現れない。ふと窓の外を見ると彼は道の反対側で花束を抱えこちらをじっと見つめていた。 目が合った。でも、彼は駆け寄ってこない。... -
ショートストーリー
過去への忘れ物
『過去への忘れ物』 エフ氏は発明家だった。 もっとも世間からは変人扱いされていたが。 彼はついに完成させたのだ。 誰もが夢見た時間旅行の機械タイムマシンを。 それは大きな柱時計のような外見で 中には椅子が一つ備え付けられている。 「これで私は歴... -
ショートストーリー
ナポレオンの身長
ナポレオンの身長 「余の辞書に『不可能』という文字はないが…… この『低身長』というレッテルは消せないのか?」 ナポレオンは、スマホで自分の検索結果を見て憤慨していた。 現代のネット掲示板には、彼がコンプレックスの塊であったかのように書かれて... -
ショートストーリー
聖徳太子の苦悩
聖徳太子の苦悩 「十人の話を同時に聞く? 無理に決まっているだろう」 厩戸皇子は、現代の教科書を読んで絶句した。 「そもそも、私はそんなに耳が良くない。 聖人君子のように書かれているが、 実際は会議中に居眠りをして 怒られたこともあるんだ... -
ショートストーリー
既読スルーの正解
既読スルーの正解 彼からの返信が3時間ない。 「あー、もう無理。脈なし確定」 スマホをベッドに投げて、私は天井を仰いだ。通知オフ。期待するのが一番疲れる。 その時、画面が光った。 『ごめん、返信考えてたら3時間経ってた。 なんて送れば君が喜ぶ... -
ショートストーリー
神になると言った男 エピローグ
エピローグ:観測されない祈り すべての記録がアーカイブに飲み込まれ、画面が暗転した。私は静かに席を立ち、窓際へ歩み寄った。 街は、今日も美しい。計算され尽くした交通量、最適な光量で街路を照らす街灯、そして誰もが「正しいタイミング」で眠... -
ショートストーリー
神になると言った男 第12章
第十二章 神になりたかったのは誰か すべての記録を読み終え、私は端末を閉じた。部屋には、深夜の静寂だけが残されている。窓の外を見下ろせば、青いランプが等間隔に並ぶ街並みが、完璧な回路図のように整然と広がっていた。 〈彼〉が消えてから、... -
ショートストーリー
神になると言った男 第11章
第十一章 最後のメッセージ それは、システムの最深部、ガラクタのような古いキャッシュデータの中に埋もれていた。編集チームによって磨き上げられた「聖典」でもなければ、AIが生成した「最適解」でもない。暗号化すらされていない、ただのテキスト...
