【第14回】家を買うという、不思議な遊び

私が社会人になった時、ちょうどリゲインのCMが流行ってたんですよ。「24時間働けますか?」ってやつ。

懐かしい!。今だったらクレームが来そうな内容ですけど。。。(笑)

でも当時は「俺は24時間働けるぜ」みたいな感じで、みんな盛り上がってました。

たしかに。すごい時代でしたよね。

今は「そんなに働かなくていいじゃん」という空気ですよね。覇気のない時代になったって言われてますけど、私にはマトモになったように見えます。

同感ですね。当時の日本人って「生存欲求を満たす」という領域に閉じ込められていた気がします。

バブルの全盛期だったのに、どうしてですかね?

戦争に負けて、「家族を養うためには、ハードに働くことが当たり前なんだ」という思いがずっと続いて来たんですよ。

国を挙げての一種の洗脳だった気がしますね。

それが今は解けてきたってことじゃないですか。

でも、まだまだ解けてない洗脳もありますよね。

たとえばどのような?

たとえば家を買うという行為。月の土地を買うのと同じくらい、地球の土地を買うのってバカバカしいと思うんですけど。

ナンセンスですよね。私もそう思います。

宇宙人的に見ると、やっぱり地球人が土地を買うっていうのはナンセンスですか?

はい。そもそも誰のものでもないところに、無理やり線引きして、権利を主張して、価格をつけて。そんなの幻想でしかないですよ。

幻想ですか。

2011年に東日本大震災があって、全部津波で流されたじゃないですか。

はい。 

僕は元々、東北大学で4年間過ごした土地で思い出深い場所でもあるので、震災後、実際に見にいったんです。

どうでしたか?

昔、家庭教師のアルバイトで訪問していた家があったところが、全部まっさらになってるわけですよ。元々そこにあった権利だのなんだのって、結局何だったんだろうみたいな感覚になりました。

もう、どこかも分からない。

土地が「誰かのもの」という感覚自体が、凄くおかしいですよ。もうほとんどチャップリンの映画に出てきそうな喜劇ですね。

でもみんな凄く執着しますよね。土地に。

その執着にバイアスをかけて起こったのがサブプライム。「俺たちに買えるわけがない」って人に対して、金融的なマジックを仕掛けてどんどん買わせた。

で、崩壊した。

宇宙目線で見た時には「地球人って、なんて不思議な遊びをしてるんだろう」っていうふうに見えますね。

まさに不思議な遊びですよね。

せっかく身体をもって奇跡的に生まれてきているんだから「もっと他にやることあるんじゃないの」って思いますね。

たとえばディズニーランドがあるでしょ。

はい。

あれも言ったら幻想じゃないですか。

幻想ですし、夢のある遊びですね。

でも遊びに行く人は、本当にディズニーの世界に入り込んだつもりになって、ミッキーがいるんだというふうに自分を騙して喜んでいるわけですよ。

はい、そうですね。

でもやっぱりどこかで「これは幻想だ」というのが、分かっているわけじゃないですか。

そうですよね。幻想を楽しんでるんですよね。

そういう意味ではスポーツも幻想だと思うんですよ。ルールを決めてその範囲の中で戦って勝ったみたいなことを喜んだりとか。

応援してるチームが優勝して大喜びしてるのも、冷静に考えたら実は可笑しなことですよね。

ディズニーランドとかスポーツって、人間が編み出した高度な遊びじゃないですか。

確かにそうですね。

その遊びの最たるものが金儲けだと思うんですよ。土地を自分の名前にするとか、自家用ジェットを持つとか、成功してみんなから凄いと言われるとか。

億万長者を目指すリアル人生ゲームって感じですね。

ある意味「凄く高度な遊び」をしていらっしゃるわけですよ。地球人は。

なるほど。確かにそうとも言えますね。

だから「甘んじてそれを楽しむ」っていうことも、ありだと思うんですけど。どうなんでしょう。

楽しむという範疇で、それを遊びに参加しているプレイヤーたちが分かっていたらいいと思うんです。でも遊び心を忘れてしまって、「これが全てだ」という絶対性を持った途端に遊びでなくなるんですよ。遊びに対する絶対性と重要度を上げすぎですね。

遊びが遊びでなくなることが問題だと?

その通りです。

野球をやってる人も、野球に人生かけてますもんね。

そうなっちゃうんですよ。

凄く失礼な言い方なんですけど「たかが野球」って感覚が、凄く大事ですよね。

凄く大事です!

たとえば「投げれなくなったから、もう俺は終わり」とかって、人生が駄目になっちゃうのはおかしな話で。

そうそう、おかしな話ですね。野球人生は一つのステージですからね。

そもそも楽しむために野球をやってただけなので、また他のもので楽しめばいい。

その通りです。

そういう意味では、そもそも楽しむために金儲けしてるわけじゃないですか。

宇宙人目線で見たらそうですね。

だったら、会社に勤めるとか働くこととかが楽しくないんだったら、やる意味ないですよね。

無意味ですね。

ただただしんどくて、生きるために耐えてるっていうのは、すごい歪みを感じます。

僕もいわゆるリゲイン世代なので、ガムシャラに働いて成功したいっていう人が周りに多かったんですよ。

それは正しいゲームの楽しみ方じゃないんですか?

どうなんでしょう。彼らは「成功したい」って言うんですけど、そもそも成功の定義がお金集めなんですよ。

そりゃあそうです。お金儲けゲームなんですから。

成功してお金がいっぱい入って、いろんなものが買えて、チヤホヤしてくれる人も増えていく。

そうなることが楽しいんですよ。

本当に楽しいんですかね?

それも洗脳だと?

川崎に日本理化学工業さんっていう身体障害者の方を積極的に雇ってチョークを作っているユニークな会社があるんですよ。

聞いたことあります。有名ですよね。

会長さんが若かった社長時代の頃、初めて体が不自由な方を雇ったんですね。そしたら健常者の方からクレームが出たらしいんですよ。

なぜクレームが出るんですか?

なぜ体が不自由で上手く仕事ができない人と、私たち健常者の給料が同じなんだと。生産性が低い人と同じ給与なのは不公平じゃないかというわけです。

今だったら考えられないクレームですね。

そうですね。そうした声を受けて、社長さんは滅茶苦茶悩むわけです。それで、あるお寺の住職さんに相談したらしいんですよ。

その住職さんは何て答えたんですか?

あなたはそこで悩む必要は全くないんだと。あなたは素晴らしいことをしている、自信を持って思いっきりやりなさいと。

まあ正論ですよね。

あなたがやっていることは、人の幸せに直接紐づいていることなんだと。

人の幸せに紐づいている?

はい。障害者の方々に仕事の機会を与えることによって、素晴らしいものを提供することができていると。

働く喜びということでしょうか?

その住職さんいわく「幸せの定義」というものがあって、まず人から必要とされることが大切らしいんです。

必要とされて、人の役に立つと嬉しいですよね。

そして、人のお役に立つと当然その人から感謝される。こうした感謝が積み上がって、人間関係が豊かになり、最終的に多くの人に愛されるようになると。

必要とされて、お役に立って、感謝されて、愛される。

はい。それが幸せの定義だと、その住職さんがおっしゃったそうです。

幸せの定義?

障害者の方というのは働けるということ自体がもう喜びでしかないわけです。普通の人だったら1時間ずっとチョークの長さをはかるだけの仕事をするってなかなか苦痛じゃないですか。

私にはできないと思います。

ですよね。僕も無理です。でも彼らは8時間ぶっ通しで喜んでそうした仕事ができるわけです。

なんとなく分かります。私も会社が潰れたときに考えました。自分は一体誰に必要とされてるんだろうって。

ですよね。本来、人はこういう世界観の中でしか生きられないし、幸せを感じることもできないんですよ。

その根本がすでに歪んでしまっていると。

そう思っています。

<第15回へつづく>

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