【第19回】しんどさの正体

会社が潰れた後やることがなくなって、すごく暇になったんです。

毎日、何やってたんですか?

人間について考えてたんですよ。

やっぱり安田さんは変わっていますね(笑)。

人間って朝から晩まで働いているじゃないですか。

はい。

自分もそのひとりだったわけですが、レールから外れて、客観的に観察してみたわけです。

どうでしたか?その人間探究は。

すごく不思議なことを発見しました。

どのような?

動物って、ほとんど寝ているだけなのに、ちゃんと生き続けているじゃないですか。

まあ、そうですね。

一方、これほど頭が良く、これほど文明の発達している我々人間は、朝から晩まで働いているのにちっとも楽にならない。

確かに。どんどん、しんどくなっている気がします。

それが不思議で、色々と原因を考えたんですよ。

分かりましたか?その原因は。

分かりました。私の行き着いた結論は、動物は無駄なことをしないってこと。

どういうことですか?

人間は無駄なことばっかり、するじゃないですか。たとえば旅行に行くとか、料理するとか、オシャレをするとか。

料理は無駄ですか?

そもそも「料理とは何か」って考えてみたんですけど。

かなり暇だったんですかね、人って。(笑)

料理とは「食べられないものを食べるようにする行為」なんですよ。そのままでは食べられないすじ肉とか植物とかを、焼いたり、煮たり、味付けしたり。

確かに!

動物はそんな無駄なことはしません。そのまま食べられるものを食べて、食べられないものは食べない。

動物は料理できませんからね。

できないとも言えますが、基本的に彼らはそんな無駄なことをしないんですよ。そのままで美味しいもの食べて、不味いものは食べない。

でも人間は違うということですよね?

だって考えてみてください。フカヒレなんて味も栄養もないものを、わざわざ干して、水で戻して、味をつけて、何万円もする食べ物に加工している。

そのフカヒレを高級だと有り難がって食べますからね。

そう。衣服だって元々は、寒さを防ぐとか、怪我をしないことが目的でしょ?

そうですね。

それなのに、オシャレとか言って、わざわざ穴を開けた高いズボンを買うわけです。

動物からしたら、訳が分からないでしょうね。

そうでしょ!こんなに働いてるのにちっとも楽にならないのは、不必要なことばかりしているからなんですよ。

そんなに人間は無駄なことばかりしてますか?

ファッション、旅行、スポーツ、映画、遊園地、コーヒー、アイスクリーム、骨董品、美容院、すべて無駄なものばかり。

美容院も?

だって、わざわざ真っ直ぐな髪にパーマかけたり、天然パーマの人が真っ直ぐにしたり。黒いのを茶色にしたり、茶色いのを黒くしたり。

特に女性はお金かかりますよね。

そのためにまた、明日も働かなくちゃいけない。

骨董なんて興味ない人からしたら、ただのゴミですもんね。

そうですよ。300年前の皿とかを買うために、何年も働いてお金を貯めるんです。

そういう無駄なことをしなければ、もっと楽に過ごせると?

そのことに気がついちゃったわけです。すごく暇だったときに。

じゃあ、無駄なことをしなうほうがいい?

いえ、そうじゃなくて、無駄こそが本質だと気がつくことが大事なんです。

無駄こそが本質?

人間の本質は無駄なんですよ。にもかかわらず効率ばかり追い求めてる。だからどんどんしんどくなる。

もっと無駄なことをしたほうがいいと?

無駄なものとか不必要なものとかを作れば、どんどん人間は消費する。ビジネスも成功する。

なるほど。面白い考え方ですね。

じっさい世の中で成功している人って、いらないものばかり作ってますよ。

そうですね。スマホゲームとか、ヘンテコな動画とか。

反対に、真面目で、とにかく一所懸命働いている人が、どんどんしんどくなっていってる。

本当にそうですね。さっき動物が食べていくのに少しだけ食べるために動いて、あとは寝てるだけって言ったじゃないですか。

はい。

人間も自然とともにちゃんと生きてたら、たぶん同じ状態を作れると思うんですよ。

食べるのに困らないってことですか?

天からちゃんと必要なものは与えられていて、その範囲の中で生きていれば全く困らない。少なくとも縄文時代以前はそんな感じだった気がします。

何をキッカケに変わったんですかね。

初めは人が持つ好奇心だと思うんですけどね。好奇心の延長で稲作とかが始まった。

安定した食料の確保が目的だったんじゃないですか?

後々はそうでしょうけど、きっかけは好奇心だと思いますね。ある時、ちょっと植えてみたら、うまい具合に増えていった。

それが農業の始まりですか?

はい。農業やるようになって、安定性は増しましたが、その結果すごく仕事が増えていった。

毎日、畑を耕さないといけないですからね。

狩りをしてた時のほうが圧倒的に短時間で効率が良かった。獲物が取れなくて、絶滅する大きなリスクは当然ありますけど。。。

安定を求めたのが間違いですかね。

計画的に生きるようになって、安定感を求めすぎたあまり、結果的に奴隷化していくっていうジレンマが生まれている気がします。

なるほど。その辺りから始まってるんですね。

今の労働って、その最たるところまで来てしまっている気がします。本当は生きていくために必要なものって、すごく限られているんですけど。

でも、もはやそれだけでは生きていけない。

人の求める生活の基礎レベルみたいなものが、どんどんハードルが上がっていって「あれもなきゃ駄目、これもなきゃ駄目」みたいな感じに陥っていると思います。

どんどん便利になっているように見えて、どんどんしんどくなっていると。

その通りです。だから震災などが発生した時に「結局、必要なものって水と食べ物だ」って我に返って気づくわけですよ。

そこまでしないと人間は気がつかないんでしょうか?

地球にもし意識があるのであれば、こうした自然災害的な現象を意図的にやってる感じがします。

人間の意識を目覚めさせるために?

はい、本来あるべき姿を思い出させるために。

なぜ人間は、そんな地球の意思に反することをするんでしょう?

それは、明らかに「外から植え付けられた感覚」としか僕には思えないんです。

好奇心を植えつけられたってことですか?宇宙人に?

はい。好奇心とか、自我とか、思考することとか。壮大な実験として。月あたりから観察している存在がきっといるんですよ。

そこまでして人間に、無駄なことをさせる意味ってあるんですか?

無駄なことをすることによって、多様性や文化が生まれるんじゃないですかね。

確かに。無駄なことを全部やめたら、みんな同じような生活になりそうですもんね。

独裁国家とか、そうじゃないですか。みんな同じ服着て、同じような髪型で、同じものを食べて。

人生をもっとワクワクしたものにするには、無駄が必要だってことでしょうか?

僕はそう思いますね。

ぜんぜんワクワクした人生になってないですよ。むしろ、どんどんしんどくなってる。

それは目的を見失っているからですね。好奇心で、つまり遊びでやり始めたはずなのに、遊び心を忘れて効率化やお金集めが目的になっちゃってる。

どうやったら、この「しんどさ」から解放されるんでしょうか?

大切だと考えていることが、本当に大切なのかどうかを自分に問いてみること。その洗脳を解かない限り、このしんどさからは抜け出せないです。僕の書籍の中でもこのあたりのこといろいろと書いてあります。

<第20回へつづく>

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