会社に人生を委ねてる人って多いじゃないですか?
多いですね。
べつに会社を全否定してるわけじゃないんです。ただ少なくとも、しがみつくものじゃないなって思っていまして。
同感です。しがみつくっていう状況になったら感覚的にはどんどん不幸に入っていくと思います。
ですよね。「不幸の始まり」という感じがします。
「それしかない」という世界の中に入ってしまうと、「合わせなきゃいけない」とか「やらなきゃいけない」的なマスト要素がどんどん増えていくわけです。
マストが多くなると、どんどん苦しくなるわけですね?
そうです。マストが自分から発したものであればまだいいんですが、他人から押し付けられたマストは耐え難いですね。
でも一般的には「ひとつの会社で人生を全うすること」が正しいと信じられています。
これからは大きく変わっていくと思いますよ。
変わるんだったら「変わりました」って、ちゃんと言うべきじゃないですか。もう当社は「生涯を保証できる会社ではありません」って。
本当にそうだと思います!でも、そんなこと正直に言ったら、採用出来なくなる(笑)。
人が会社に依存してるように、会社も働き手に依存してますからね。
確かに!。お互いの依存バランスが取れてる間はいいんですけどね。
オレンジャーさんは会社役員でもありますけど、依存には反対ですか?
どちらかが極端に依存するのは反対ですね。だから飲み会の席では「将来どんどん独立すればいいよ」って言ってました。
他の役員さんは反対しないですか?
いや、正直真顔で反対されました。役員の立場で気軽に「卒業」とか言うのはやめてくれって。
でも、オレンジャーさんは、自分が正しいって思っているわけですよね?
もちろん。正直な話、20年後、30年後も私も含めて、今関わっている社員がずっと残るのかどうかは現時点では分かりませんし、反対された役員の方にもお聞きしました。
そしたら何と?
「私は骨を埋めようと思ってる」っておっしゃっていました。この点については、私の方がまだまだ甘かったなぁと素直に思いましたし、そのような覚悟をもって経営に臨んでいるんだと改めて学ばされました。
でも自分がそうだからといって、「一生社員の責任取れるか」と言われたら、無理じゃないですか。
はい、無理だと思います。
卒業したい人は、卒業させてあげたほうがいいですよね。
はい、もちろんです。卒業して新しい道に進むのであれば、その行為を全力で応援してあげたほうがいいと思います。ただ、積極的に現在勤めている社員に卒業を促すような話をすることは違うと思うんです。安易に逃げる道を促してしまうような反作用がありますから。このあたりのバランスをどうとるかが大切なように思います。
ただ、卒業という明確な出口があると、優秀な人が入って来やすくなりますよね。こういう流れができれば、仮に社員がやめても困らなくなるのでは。
そうですね。会社があまりに社員をがんじがらめにすると、人が入って来にくくなる。だから、いつまで経っても人がやめられたら困るというステージに、会社は居続けることになります。
昔、コンサル事業をやってた時に、顧客の卒業っていうのを考えたことがあるんですよ。
面白い!
コンサルというのは何かを教える仕事なので、「きちんと学習して3年ぐらいで卒業してもらう」ってのが正しいんじゃないかと。
それは正論ですね。
でも社内的にはみんなに反対されました。「お客さんを卒業させてどうするんだ!」って。
そうですよね!基本、顧客を囲い込んで、依存させたがりますもんね。
「そのほうが安定する」というイメージなんでしょうね。
ちょっと方向が違いますけど、僕にも似たような経験があります。
ほう。どのような経験ですか?
数年前に関わった会社で、オーダーメイドウェディングをやってた会社があるんですよ。
オーダーメイドウエディング?
ウェディング業界って、ある意味商品の型が決まっているわけです。一生に一度なのに完全にパッケージ化されている。
それをオーダーメイドに変えたと?
はい。適正価格のフルオーダーメイドという結婚式ビジネスで急成長しています。
なるほど。それで?
6ヶ月ぐらいかけて結婚式を準備するんですけど、このプロセスの中で本音を追求していくと「ふたりの意見が違ってる」という場面が出てくるわけです。
意見が違ってる?
はい。新郎新婦でやりたいことが違うんですよ。そうすると目の前で喧嘩が始まったりとか、いろいろあるわけです。
これから結婚しようというのに喧嘩するんですか?
はい。でもこのプロセスの中で、お互いの価値観がより高次元でつながっていくんです。まさに本当の夫婦としての絆をより深める大切なプロセスなんです。
途中で結婚やめちゃう人とか、いないんですか?
私が知る限りで辞めてしまった人はいなかったですが、仮に途中で別れてしまっても、逆にその違いに早く気付けてよかったのだと思います。でも、丁寧にこのプロセスを紡いでそのうえで結婚したのなら、簡単には離婚しないだろうと思います。
なるほど。
で、ビジネスモデルの本質をこの本当の夫婦の絆を深める部分に置くと、例えば3年以内に離婚したら結婚式費用の全額を返金する制度なんていうのもあってもいいと当時は思っていました。
いいですね!そういうの好きです。
いいでしょう。エッジが利いてて。実際にアイデアとして当時挙がっていました。
結果にコミットする。
そう。結果にコミット。まさにライザップ方式なんです。
金がなくなった夫婦が、すぐに離婚しそうですけど。
(笑)確かに!結局、その会社ではそのアイデアは実現しませんでした。
まあ、そうでしょうね。会社が傾く危険だってありますからね。でも、もしやってたら売上10倍になったかもしれませんね。
かもしれないですよね。
結婚式の話が出たので、ひとつ質問があるんですけど。宇宙人のオレンジャーさんに。
何でしょう?
じつは私、もう結婚式に行かないと決めてまして。
招待されても?
はい。家族以外のお葬式にも、行かないと決めてるんです。
それは、どういう理由で?
父親が死んだ時も、母親が死んだ時も、涙が出なかったんです。死ぬということが悲しいものだと思えないんですよ。
安田さんらしい。
結婚式でも、みんなすごく祝福するじゃないですか?
まあ、普通はそうですね。
でも私は、心から祝福することができなくて。無理に笑おうとすると、顔がこわばっちゃうんですよ。
(笑)
お葬式でも、みんな悲しそうな顔してるじゃないですか。大して深い縁じゃない人でも。
お葬式とはそういうもんですし、空気を読みますからね。
それがすごく嘘っぽく見えて、耐えられないんですよ。
正直すぎるんですよ。安田さんは。
悲しくもないし、祝福もしていないものが、参加するのはやっぱりおかしい。そう思って行くのやめたんです。
いいんじゃないですか。それで。
いいんですかね。宇宙人的に見ると、それは非人道的ってことにはならないんですか?
全くならないですね。
おお!安心しました。
というか、基本的には僕も結婚式は出ません。葬式も、親の葬式以外はたぶん行かないと思います。
それは、どうしてですか?
僕も葬式に行ったところでたぶん涙を流せないから。パーティーとかも本当に苦手でして、気がつくとトイレとか外で時間を潰してたりします。
似てますね。
たぶん僕らは、俯瞰的に見ちゃうんですよ。だから周りが盛り上がれば盛り上がるほど、自分はどんどん覚めて行く。当事者になり切れればもっと感情的になれると思うんですけど、商業柄なのか絶えず物事を俯瞰している自分がいるんです。
死生観なんて、人それぞれだと思うんですよ。私には「死は新たな旅立ち」に見えるんです。お別れではあるんですけど、「良かったね」っていう気持ちもあって。
すごく分かります。
「母がなくなりました」ってあまり言いたくないのは、すぐにみんな「ご愁傷様」とか「お悔やみ申し上げます」とか言うから。
言わざるを得ないんですよね、これまでの慣習として。
まあ、それは分かってるんですけど。でも、ぜんぜん悔やんでもいないし、何がご愁傷様なんだろうって、感じちゃうんです。
それでいいんじゃないですか。心をフラットな状態にして、心が悲しんでいるのであれば「悲しいですね」って伝えたらいい。
そうですよね。
嬉しいんだったら「嬉しい」って伝えたらいい。
人が死んで悲しいってのは、単なる刷り込みじゃないかって気がします。
刷り込みですか?
はい。「学校を卒業したら会社に入る」っていうのと同じ。「人が死んだから悲しい」みたいな。
そういう部分はあるでしょうね。
海外に行ったら、悲しまない種族とか民族とかいるかもしれませんよ。
確かに、普通にいますよ。
やっぱり。
<第17回へつづく>
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