宇宙人であるオレンジャーさんに、お伺いします。
はい。何でしょう?
そもそも資本主義って、何なんですか?
いきなり凄い質問ですね。
私のイメージでは、資本主義イコール株式会社って感じなんですけど。
きっかけとなったのは大航海時代ですね。ヨーロッパの貴族たちが冒険家に対して船とか私財を提供したのが始まりではないでしょうか?
そもそも何のために提供したんですか?
船ごと沈んじゃう全滅リスクはあるんですけど、香辛料とかヨーロッパにないものを持ち帰ると莫大な利益になる。
じゃあ、やっぱり収益が目当てだったんですね。
冒険の元手を出した目的は「利益の享受」でしょうね。その利益が最初の資本を増強し、資本が大きくなる。このサイクルを回すことが資本主義の目的だと思います。
それが会社の始まり?
そうです。お茶とか香辛料を買い付けに行くプロジェクトを、会社としてやったのが始まり。1600年くらいに設立された東インド会社ですね。
じゃあ、その辺りから資本主義も始まるんですか?
本格的に広がっていったのは、産業革命の後ですね。18世紀半ば。
資本を持っている人が大きな工場を建てて、人を雇って、利潤を追求し始めた。
そうです。それが本格的な資本主義の始まり。産業革命を経て資本効率にレバレッジがかかるようになったんです。
じゃあ、お金持ちじゃないと始められない。
当時は、お金をもっていた貴族階級や富裕層が主体だっと思います。
お金を持ってる人が会社を作り、リスクを背負う代わりに利益が出たら一番潤う。それが資本主義?
そうです。
それって宇宙的には正しい主義なんでしょうか?
正しいかどうかというよりも、宇宙的に見たら完全に閉じてますね。
閉じてる?
はい。ピケティさんの本が、ちょっと前にベストセラーになったじゃないですか?
資本主義に関する本でしたっけ?
「21世紀の資本」という本です。資本力を持つ人、すなわち、お金を持っている人が、結局は儲かるっていう内容です。
身もふたもない結論ですね。
最終的には富(=資本)を持ってる人が勝組になって、持ってない人はどこまで頑張っても勝てない。それを経済学的視点の中で証明してしまったわけです。この世界がもともと経済的に不平等であるということを公にしてしまったんですよ。
もはや頑張る気が起きませんね。
だから世の中にすごく大きな影響を与えたんです。でも確かに資本主義における大原則はその通りなんですよ。
その通り?
資本主義のルールというのは、ある系の中で完全に閉じているんですよ。
閉じてる?つまり金持ちと貧乏人は永遠に入れ替わらないと?
基本的にそうです。
基本的には?じゃあ入れ替わることもあると?
もちろんあります。お金持ちが貧乏になったり、貧乏な人が金持ちになったり。でもそれはとても例外的なことだということです。
じゃあ、どこが閉じてるんですか?
資本主義のベースにある基本的なルールですね。まず富を持っている側が圧倒的に有利。同じことをやっていたら同じ状況がずっと続きます。
金持ちは金持ちのまま?
余計なことをしなければ。
でも投資をして、さらに金持ちになってますけど。
よほどのヘマをしないとそうなります。資金力も、情報量も、テクノロジーも、お金持ちが圧倒的に有利ですから。
人数が逆転することって、あり得るんですか?常に貧乏人の方が多いですけど。
いや、あり得ないです。ここのルールも閉じてます。
少数の豊かな人と、大多数の貧乏人。
その通り。大多数のお金を少人数の金持ちが吸い上げている構造です。
その、閉じちゃってる資本主義が、終わる時って来るんですか?
今のカタチの資本主義はいずれ終わるでしょうね。
どうやって終わるんでしょうか?
今、世の中の通貨の総量が増えてきているんですけど。
通貨の総量?
たとえば僕らの学生時代と比べて、世界の企業の時価総額や流通している通貨の総量って何十倍に増えているわけです。
そんなに増えてるんですか?
はい。でも物やサービスの量は数十倍になってるわけじゃない。せいぜい数倍程度ではないでしょうか。
ということは、お金の価値が下がっていると?
お金がどんどんコモディティ化して、単位当たりの価値下がってると思います。
でも実際にはインフレどころか、デフレじゃないですか?
それは、一箇所に資産が集まり過ぎているからです。
トップ10人のお金持ちが、全人類の資産の半分を持ってるらしいですよ。
しかもその貧富の差は進行中で、持っている人のところにどんどん集まっていく傾向があるんです。まさに現在の資本主義のルールに従って順調に貧富の差がどんどん広がっている。ピケティさんのご指摘の通りです。
普通に考えたら、お金が暴落するはずですよね。
持っているだけでは暴落しません。市場での流通量がキーだと思います。
じゃあ、たとえば、その10人のお金持ちが、自分の全財産を一気に使い始めたら、暴落しますか?
市場での流通量が一気に増えますので、間違いなく暴落します。でもそんなに交換するものがないですね。金融資産だけが膨らみ過ぎているので。
ってことは、実際には使えないってことじゃないですか。
全部は使えないですね。多分。
本当はもう、お金持ちが持ってるほどの価値って、ないんじゃないですか?
ないと思います。
でも現実には、あるじゃないですか。
あると信じている人がたくさんいるから、あることになるんですよ。
でも、ほとんどの人は持ってないわけでしょ?お金や資産を。
大多数は持ってないです。一部に集中してますので。
だったら大多数の人にとっては、貯金や資産の価値なんて、本当はない方がいいのでは?
理屈で考えると確かにその通りですね。でも実際には、持っていない人ほど欲しがりますから。
欲しがるから、価値が上がる?
そう。しかもない人ほど欲しがる。。。
金持ちの思うツボ。
その通り。
頭が悪いんですかね?
いや、頭が悪いわけじゃなく、そういう系の中に閉じ込められて洗脳されているんですよ。
閉じ込められてる?
はい。この系においては、価値イコール「プライスタグが付いたもの」なんですよ。
プライスタグ?
はい。つまりお金に換算できるものということです。プライスタグとは値札のことで、すべての価値判断が値札によってなされているということです。
それが価値のあるもの?
と、思い込んでいるということです。
じゃあ、本来は違うんですか?
物々交換の世界であれば、プライスタグなんてないので。お互いがちゃんと目利きしないといけない。
なるほど。目利きですか。
この目利きの部分を、利便性とか効率性っていう名のもとに捨ててしまっているわけです。
じゃあ、目利きが復活すれば、お金に振り回されなくなる?
もちろん、そうなります。自分自身の価値も、人間関係も、本当はプライスレスじゃないですか?
プライスレス?
人によって受け取る価値は違うんですよ。でもプライスタグが中心になると、その価格によって絶対的な価値がなぜか決まってしまう。
「お金持ってる人が偉い」となる?
そうなりますよね。でも、僕が考えるにお金持ってる人は「お金集めゲームが得意な人」なんですよ。
なるほど。
しかも今はそのゲームのかなりの部分をAIがやってるので。
さらに差が広がると?
資金を持ってる人が情報を集めて、凄いAIを手に入れちゃったら、その人のお金はどんどん増えていく。
だけど実際には何も増えてないじゃないですか。世の中のお金を増量させているだけで。
でも、ほとんどの人はプライスタグを信じているので、お金持ちの権利はどんどん大きくなっていくんです。
その権利と置き換えられるのって、お金がない人の労働なわけですよね。
お金がない人は、労働力をお金と何交換しますね。
それで安い仕事を受けて、労働の価値ががどんどん下がっていく。
安く受ける人がいれば、下がっていきますね。
それが不思議でしょうがないんですよ。なんで自分の価値を下げるような、やりたくもない仕事を安くで受けちゃうんですか?
今、みんなが少しずつ、その違和感に気づき始めていると思います。
そうなんですか?
だけどまだ、お金の縛りであるとか、プライスタグの世界に、がんじがらめにされている。
誰が、がんじがらめにしてるんですか?資本家ですか?それとも政治家ですか?
いや、自分の信念ですね。自分で勝手に枠組みを作って、それを信じてその中に閉じこもってるんですよ。
<第18回へつづく>
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