大人とは何ぞや、っていうことでしたけど。
はい。
私は昔から、人に何かを強要されるのが嫌いなんですよ。
確かにそうですね!私も同じですけど。
でも子供って、本来そういうものじゃないですか?
本来はそうです。でも大人になるに従ってだんだん変わっていく。
だんだんというか、いきなり変わりますよね?
ある日突然?
そんな感じでした。気がついたらみんな受験勉強してる、みたいな。
安田さんらしいですね。周りが見えてないというか(笑)
また私の悪口ですか?
いえいえ、褒めてるんですよ。僕は自殺未遂する37歳ぐらいまでは、周りに合わせまくって生きてきましたから。
そうなんですか?
はい。自力で頑張る力が強かったので「結果を出して、褒められて」というサイクルをずっと回し続けていました。気がついた時にはその状態が当たり前になっていたんです。
それが突然、覚醒しちゃったと。
そうです!後悔はしてないですけど、もう一回人生をやり直せるんだったら、もっと早い段階から「あるがまま」に生きてみたい。
「あるがまま」ですか?
あるがまま。あるいは、人に迷惑かけない形での「わがまま」。
迷惑はよくないと?
はい。ただ、その「周りに迷惑をかけない」というのも、凄く微妙な表現ですよね。
どういう点がですか?
たとえば先生から見たら、1人異端児がいるだけで「こいつの存在は(先生にとって)迷惑だな」って感じるわけですよ。でも別に彼は、社会的に迷惑をかけてるわけじゃない。要は迷惑を感じる人の主観によって判断が左右されるんです。
そういうことって、よくありますよね。
はい。「これが正しい」という価値観で見たら、その価値観にハマらないものは、全て都合の悪い存在になってしまう。
絶対的に「正しい価値観」ってあるんでしょうか?
ないと思います。すべての価値観は相対的であって、いろんな人の価値観が混じりあって多様な集合意識を形成している。この多様性を無視して1つの世界観に押し込めることは、非常に危険ですね。
私は中三の時、行きたい高校が1つだけあったんです。父親の母校で制服がなく自由な男子校。そこに行きたかったんですよ。
なるほど。
でも私の学力では入るのが難しくて、先生は「この3つの学校から選べ」というわけです。
その3つには、志望校は入ってなかった?
入ってませんでした。頭が悪かったので、ガラの悪い高校ばかり。どこへ行ってもイジメられて、悲惨な3年間を過ごすことが目に見えてました。
それはすごいですね。当時の安田さんにとっては究極の選択でしたでしょうね。
でも、自分が行きたくない高校に行く意味が、分からなかったんですよ。
まあ、そうですよね。
でも先生は「絶対受からない」「中学浪人でいいのか」って脅すわけですよ。
また、ムカつく言い方しますね。先生なのに脅迫ですか。。。
で「別に構いません」って言ったんです。そしたら、うちの親が呼び出されて。
(笑)まあ、そうなりますよね。
でも親も変わってる人なので「好きにさせてください」なんて言うわけですよ。
それは、すごい!素晴らしい親御さんですね。
それからの数ヶ月間、毎日毎日いろんな先生に呼び出されて「お前がいかに周りに迷惑をかけているか考えろ」って言われました。
なんか洗脳されているみたいですね。それで、どうなったんですか?
落ちたら「先生のいう通りの公立高校を受験します」という誓約書を書いて、受験させてもらいました。
誓約書、すごい話ですね。。。それで、受かったんですか?
奇跡的に受かってしまったわけです。
おーーー!ミラクルを引き寄せたんですね。
はい。ただ、祝福してくれる人は、学校には1人もいませんでした。
1人も?友達も?
そもそも友達と呼べるような人が、いなかったんですけど。同級生はみんな「恨みと妬みの籠った目」で見ていましたね。
どうしてですか?
「当然こいつは落ちる」「みんなで笑ってやろう」って待ち構えてたんですよ。
それは、また性質(たち)の悪い同級生ですね。
彼らも、かなりフラストレーションが溜まってたんですよ。だって僕よりもはるかに勉強のできる同級生が、僕よりも下の学校を受けているわけですから。
でも、それは自分の希望でしょ?
違います。みんな「行きたい学校」ではなく「先生に言われた学校」を受けるんですよ。わざわざレベルを下げて。
どうして?
安全だから。自分の希望なんてどうでもいいんですよ。先生はただ合格率を高めたいだけ。浪人を出したくないから。
浪人生が出たら先生の責任になるということですか?
だからって「行きたくもない学校に押し込めてどうするんだ」と。
本当ですよね!先生の都合のために、可能性を狭められているんですね。安田さんは、ある意味強い意思を持った子供だったんですね。
いえいえ。その時はただ感情的に反発していただけです。今だからこうやって言葉にできるんですよ。
周りに誰も味方がいない状態で、安田さんはどうやって自分を支えていたんですか。
どうやってたんでしょうね。覚えてないです。
普通の人はそこで心が折れたりとか、気が弱かったら自殺してしまったりとか、するわけじゃないですか。
私は小学生の頃から、かなりのいじめられっ子だったんですけど。
そうおっしゃってましたね。
毎日、田んぼに突き落とされたり、カビの生えたパンが引き出しに詰め込まれていたり。でも死にたいと思ったことはないんですよ。
そうなんですね。
はい。でも殺したいと思ったことはあります(笑)
え!大丈夫なんですか?そんなこと、こんな公開の場でお話してしまって!(笑)
いいんですよ。本当のことなんで。私はケンカなんてしたことがなくて、飛び道具持っていても勝てないのと思ったので、家で毒を調合していました。
マジですか?
いや本当に。やじりに毒を塗って、吹き矢で後ろから襲ってやろうと。
嘘でしょ?やばすぎませんか?
本当なんですよ。鍋でいろんなものを煮込んで作ってました。
毒薬?
でも当時はインターネットがなかったので。
そうですよね。
だから結局、毒薬なんて作れなかったんですよ。ただ毒々しかっただけで(笑)
吹き矢で襲ってたら、反対にボコボコにされてましたね、きっと。
危なかったです。でも良かったですよ。今だったらネットで調べて、本当に毒作れちゃいますから。
安田少年だったら、やりかねないですね。
でも正直いうと、自暴自棄になったことはないんです。
それはどうしてなんですか?
たぶん、親が100パーセント肯定してくれたからです。
100パーセントってすごいですね。
テストで0点取っても怒られたことなかったです。
悲しそうにしていませんでしたか?
ぜんぜん。0がダンゴに見えたみたいで「おダンゴくん」と呼ばれてました。
「おダンゴくん」(笑)!
すごい親御さんですね!
「人に迷惑かけなきゃそれでいい」って感じでした。
「どこからが迷惑なのか」は教えられましたか?
いえ、教えられたことないです。近所でずっと変人扱いされてましたけど、親は平気でしたね。
嫌味とか言われてたんじゃないですか?
今から考えたらそうですね。「安田さんところのヨシオくんはユニークねぇ」なんて言われてましたから。
当時は嫌味だと分からなかった?
はい。褒め言葉だと思ってました(笑)
流石です!
<第14回へつづく>
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